エンゼルスが直面する『大谷リスク』と再生への道

エンゼルスが直面する『大谷リスク』と再生への道

えのきどいちろうの超・大谷翔平ウォッチング!(5) (写真提供・共同通信社)

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    gooスポーツ編集部
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 「大谷翔平が故障者リスト入り」、衝撃のニュースが飛び込んできたのは日本時間の6月9日未明のことだ。同7日のロイヤルズ戦で右手中指のマメのため緊急降板(4回63球)した大谷が、何と右ひじのじん帯損傷で故障者リスト(DL)に入ったというのだ。エンゼルスは公式に「損傷は中程度のグレード2、部分断裂している状態」であり、既に自身から採取した血小板を用いる「PRP注射」による再生治療を受けていると発表した。「PRP注射」はヤンキース・田中将大投手がひじの故障で用いて、日本でも知られるようになった。今後に関しては「3週間後の再検査」待ちだが、最悪の場合、トミー・ジョン手術(じん帯移植による再生手術)に踏み切る可能性もある。

 マメの影響じゃなかったのか。その後の詳報によると緊急降板したロイヤルズ戦、女房役のマルドナルド捕手が投球練習中に異変を感じ、首脳陣を呼び寄せていたそうだ。マルドナルド捕手の危機管理能力がなければ、大谷はそのまま投げ続け、完全断裂に至っていたかもしれない。完全断裂してしまえば、トミー・ジョン手術以外の選択肢がなくなり、今季絶望の長期離脱になるところだった。

 MLBのライジングスターのDL入りはアメリカでも大ニュースになった。このまま行けばオールスター選出が濃厚で、今年の目玉になるところだった。エンゼルスのマーケティングは見直しを迫られる事態だ。日本のメディアや旅行代理店も落胆しきりだ。オールスター戦出場に向けて中継準備を始めたり、ツアーを組んだりしていたがどうなるかわからない。またよくないことは重なるもので、ここに来てダルビッシュ有、田中将大等、日本人大リーガーが何と次々にDL入りしてしまった。いきなりの暗転である。

 僕は隔週掲載の当コラム執筆が待ち遠しくて、田中将大とのMLB初対戦のことも書きたいし、日本ハムから一緒にアメリカへ渡った水原一平通訳の野球カードが作られた(通訳の野球カードができるのは異例のこと!)のもぜひ触れたいし、ジリジリしていたのだ。まさかDL入りの記事を書かなきゃならないなんて。

 身につまされたのはエンゼルスのマイク・ソーシア監督が「重要な選手を2名失うようなこと」とショックの大きさを語ったことだった。筆者はファイターズファンなので、そのつらさを知っている。日本ハムは2016年シーズン、大谷の大車輪の活躍で日本一に輝き、翌2017年は大谷の故障で5位に低迷した。僕は「大谷リスク」という言葉でその現象を呼んだのだ。「2刀流の大谷」がいなくなると、投打の中心が2人いなくなるのと同じなのだ。

 2018年のエンゼルスと2017年のファイターズの違いは、大谷依存度の違いじゃないかと思う。在籍2ヶ月のチームはまだ「大谷以前」への切り替えがきく。5年かけてチーム一丸で取り組むと、離脱した場合の空白が大きすぎるのだ。「大谷の2刀流」は好むと好まざるとにかかわらず、大谷ありきのチーム編成を要請する。例えばエンゼルスは大谷に休養を与えるため、(MLBでは異例の)中6日ローテを組まざるを得なかった。先発投手のコマ数が要るのだ。あるいは指名代打の選手は(大谷の都合に合わせ)試合に出たり出なかったりする。それで調子を崩すかもしれず、またプライドを傷つけるかもしれない。

 もちろん「大谷ありきのチーム編成」にするだけの価値はあるのだ。だってあのピッチングとバッティングを見れば、誰だってしびれる。ただ当たり前の話だが、「大谷ありきのチーム編成」は大谷なしで成り立たない。

 最新の報道は「打者のみ復帰」の可能性に触れ始めた。もしかすると「ピッチャー大谷」を封印し、ひじの保存療法がはかられる一方、指名代打の「バッター大谷」として今季の出場が実現するかもしれない。まぁ、叶うのなら、それはそれでスーパーな出来事だ。果たして「一刀流大谷」伝説が幕を開けるのだろうか。

 もちろん先のことはまだわからない。最後にひとつだけ、記しておきたいことがある。大谷翔平のビッグチャレンジを目にし、あれだけ騒いでおきながら、まだ「2刀流でケガをするのはわかってた」みたいな手のひら返しを目にする。本当に残念なことだ。野球選手は2刀流でなくてもケガをする。ひじのじん帯を痛めたダルビッシュも田中マー君も2刀流の選手ではない。そこは切り分けて考えるべきじゃないだろうか。

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<えのきどいちろうプロフィール>
1959年、秋田県生まれ。コラムニスト。中央大学時代に仲間と創刊したミニコミ誌『中大パンチ』の原稿が『宝島』編集者の目に留まり、商業誌デビュー。以降、各紙誌にコラムやエッセイを執筆。網羅するジャンルは多岐に渡り、特に多くのスポーツコラムを連載。ラジオのパーソナリティーとしても文化放送、TBSラジオに出演中。

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