ラジオ中継の現場でセネガル戦を満喫する

ラジオ中継の現場でセネガル戦を満喫する

えのきどいちろうワールドカップ雑記帳(2)(写真提供・共同通信社)

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    gooスポーツ編集部
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 J2第20節、町田×新潟(町田市立陸上競技場)の取材を終え、いよいよ深夜24時からロシアW杯グループ予選(H組)の第2戦日本×セネガルだ。僕は小田急線と山手線を乗り継ぎ、一路、浜松町を目指した。文化放送9階でセネガル戦を見るのだ。ラジオ中継の現場だ。おそらく一般には注目されることが少ないと思うが、ワールドカップはちゃんとラジオ生中継が組まれている。

 民放連が「ジャパンコンソーシアム(JC)」を組織するのだ。JCはワールドカップやオリンピックのような国民的に関心の高いスポーツイベントの都度、立ち上がる。現実問題、例えば(NHKに関しては除外して考えるが)民放一社系列では放送権料を支払えないという側面もある。だから総力戦でお祭りっぽくやる。JCはもちろんテレビでも組織されるが、画期的なのはラジオの場合だ。各局横並びで同じ放送を出す。リスナーとしては各局を聴きくらべて「おおお、ぜーんぶ同じ放送」と確認する楽しさがある。また各局の花形スポーツアナがよその電波でしゃべるのも嬉しい。ちなみにロシアW杯の(ラジオの)JC参加局数は全国72社、横並びの同時オンエアはこのセネガル戦がいちばん多くて70局ということだった。

 で、今大会、そのJCの幹事局というか、制作本部が置かれているのが文化放送なのだった。これがね、面白いもので本当は順番的にはTBSラジオの持ち回りだったはずが、以前、文化放送が四ツ谷から浜松町へ移転した折(2006年)、その慌ただしさ等を考慮し幹事局がTBSに代わった。文化放送から見ると、今年はその分を返してもらったニュアンスもあるらしい。ちなみに文化放送が制作本部を担当するのはブラジルW杯に続いて2大会連続だ。

※この2006年のTBS幹事社のときは記憶にあって、当時、僕は『アクセス』(TBSラジオ)という番組のレギュラー出演者だった。生番組を終えてスタジオを出たら、向こうから文化放送の長谷川太アナとセルジオ越後さんが歩いてくるではないか。TBSで文化の長谷川アナに遭遇するのが意外だった。確か決勝トーナメントの一戦だったと思う。ちょうどいいから見学して帰った。

 さて2018年ロシアW杯、「日本vsセネガル」である。この試合は「実況・松島茂、解説・森岡隆三」の文化放送セットだった。今大会は第1戦コロンビア戦が「実況・佐藤文康、解説・金田喜稔」のTBSセット、第3戦ポーランド戦は「実況・煙山光紀、解説・水沼貴史」のニッポン放送セット。以下、日本代表の決勝トーナメント進出が実現すれば随時組まれる。また決勝戦は「実況・長谷川太、解説・奥寺康彦」の文化放送セットが予定されている。

 JR浜松町駅を降りて、文化放送9階フロアへ上がったら、案外リラックスした雰囲気だった。但し、森岡隆三さんの入りは遅れている。直前までNHK総合テレビに出演していて、終わり次第こちらへ向かうのだ。

 スタッフに尋ねたら第1戦コロンビア戦は、民放連や電通のスーツを着た人が大勢立ち会って、フロアの緊張感が並じゃなかったそうだ。この日はぜんぜん普段と変わらない。「JC感」を漂わせたものはスタジオ内の大きなモニターくらいだろうか。面白いのはスタジオ内のレイアウトだ。通常、向い合ってトークするMCテーブルの片側に大型モニターが2台設置された。MC席は逆側に横一列だ。これが専門用語で「オフチューブ」と呼ばれる中継の実況席である。実況クルーはロシアのエカテリンブルクアリーナではなく、浜松町のスタジオにいる。国際映像のモニターを見ながら実況音声を乗せるのだ。この手法は現在、衛星放送のMLBや欧州サッカー中継等でもよく使われる。

 解説の森岡隆三さんが局入りされた。ご存知、日韓W杯の「フラットスリー」の一員である。NHKのデイリーハイライトではサトミキに「森岡ゆうぞう」と名前を間違われ、ネットで「サトミキ不要!」「可愛いから許す!」と論争になったりした。もちろん僕は可愛いから許す派だ。森岡さんはDF出身らしく「早くセネガルのリズムに慣れること」をポイントに挙げ、リポビタンDをひとビン持ってスタジオに入った。以下、僕たちはテレビモニターを見ながら、ラジオ実況音声を聴く。日本人のほとんどは「実況・田辺研一郎、解説・都並敏史、城彰二」の日本テレビセットだったと思うが、僕らは違っていた。

 試合経過自体はもうニュースやワイドショーで死ぬほどリピートされて、ここでわざわざ振り返る必要はないだろう。GK川島永嗣のミスで早々失点したところから始まって、日本代表は二度リードされ二度追いつくという奮闘を見せた。スリリングな好ゲームだった。日曜深夜というか月曜未明なのに日本じゅうが熱狂したのだ。

 興味深かったのはラジオ実況と映像のコラボ(?)だった。いや、よくサッカー中継を見ていて、実況解説が目の前の試合と関係ない雑談を始めてイライラすることがあるじゃないか。特に日テレだ。下調べしといたネタの「ノート読み」を延々する。僕はクラブW杯でも高校選手権でも、いつもあれに閉口する。

 ラジオ実況にはあれが皆無なのだ。絵がない分、シンプルな実況解説に専念するからコラボ(?)させると、プレーの理解度が増す。セネガル戦の場合、森岡さんのディフェンス解説が秀逸だった。プレッシャーの位置、追い込み方の原則、無力化させたい敵の選手、何事もなく終わったプレーの1つ2つ前にあった危機管理の詳細。こういうのはラジオ実況を聴かなかったらわからなかった。森岡さんのおかげで解像度が増し、視力が良くなった感覚だ。

 もちろん乾やケイスケホンダのゴールにはフロアの皆とハイタッチである。楽しかった。あと名刺交換してわかったが森岡隆三さんのマネージャーは僕の学生時代の知り合いで、ハタチくらいの次はお互い中年になってセネガル戦だった。意味不明の盛り上がりである。さぁ、次はグループ予選突破をかけたポーランド戦だ。

<えのきどいちろうプロフィール>
1959年、秋田県生まれ。コラムニスト。
gooニュース スポーツコラム「えのきどいちろうの超・大谷翔平ウォッチング!」をはじめ、多くのスポーツコラムを執筆。
スカパー!サッカー番組のパーソナリティーも務め、ロシア大会関連番組にも出演中。

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