大谷翔平はア・リーグ新人王を獲れるのか?

大谷翔平はア・リーグ新人王を獲れるのか?

えのきどいちろうの超・大谷翔平ウォッチング!(10) (写真提供・共同通信社)

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    gooスポーツ編集部
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 MLBシーズンは宴たけなわだ。ア・リーグ西地区はアストロズとアスレチックスが「同率首位」で激突した。ファンにとってはこの上なくしびれる毎日だが、これが上位からちょっと置いていかれたチームとなると事情が変わってくる。他ならぬエンゼルスがそのポジションだ。今シーズンはケガ人続出で、戦績も5割キープがやっとという現状だ。まぁ、大谷翔平は(名門ヤンキースや強豪レンジャーズ、ドジャース等々をソデにして)敢えてのびのびやれるエンゼルスを選んだわけだが、チームに上がり目がなくなってくると、どうしても大谷だけに話題が集中してしまう。

 僕は知人を通じて西海岸の報道の様子を探ってみたのだ。日本にいると大谷の話題しか入って来ない。これは日本だけの現象なのか。まぁ、日本のMLB報道が日本人プレーヤー中心になるのはある程度仕方ない。現地はどうだろう。L.A.ではもうちょっと違うんじゃないのか。

 と、これが「大差ない」ということだった。L.A.では基本的にドジャースが話題の中心であり、エンゼルスはちょっと傍流なのだが、今年は基本いつも大谷の記事を見かけたという。最近、他に印象に残ったのはソーシア監督の去就に関する記事くらいだそうだ。

 その大谷はチームの主力打者として活躍する一方で、投手として復帰するステップを慎重に踏んでいる。ヒジの医学的検査&再検査を経て、投球動作の確認をキャッチボールからスタート、ブルペンで少しずつ球数を増やしていき、打者を立たせて徐々に実戦感覚を取り戻すというアプローチだ。まぁ、エンゼルスからしたら大谷は「金のなる木」だから、これ以上ないくらい慎重になるのはわかるが、本当に今シーズン投げられるのか。それはヒジの状態という意味でも、投手としての再調整(コンディションづくり)という意味でも。

 というのは、ヒジがどの程度の状態か僕らにはわからないからだ。「断裂の危険性があった」と言われれば、それは大変だと思うしかない。日本からアメリカに渡った多くの投手(つまり、日本のプロアマで実績を残し、肩ヒジを酷使したスターたち)は問題を抱えている。

 一方で大谷本人が「(こっちは)スーパー過保護ですよ」と言ってるというのも伝わってくる。そもそも指先のマメの状態で降板したら、球が抜けるのは医学的にもチェックしたほうがいいんじゃないかということになって、DLリスト入りまで行き着いたという、最近ささやかれだした「実は大したことなかったんじゃないか説」だ。商品価値が高すぎる弊害というのか。もしそうだったとしたらキャンプからいったん念入りに仕上げた「投手としてのコンディション」がご破算になったわけで、労力のロスがハンパない。そして、(コンディションをいったん緩めて)もう一度トップの状態をつくるのは簡単じゃないだろう。

 しかし、「投手大谷」の復活は待望されているのだ。例えばその理由の一つにア・リーグの新人王争いがある。先頃、『スポーツ・イラストレイテッド』誌にMVP、サイ・ヤング賞、新人王等、賞レース予想の記事が掲載されたが、それによるとア・リーグ新人王はヤンキースのミゲル・アンドゥハーと大谷の一騎打ちということだ。

 レースは現在のところ、安定した打撃成績を残しているアンドゥハーが、1ヶ月の戦線離脱を経験した大谷を一歩リードしている。大谷は打者としてだけなら打率2割台半ば、ホームラン10本台という数字しか残していない。また投手としては離脱するまで4勝1敗、防御率3.10、49回1/3で61奪三振とパンチ不足だ。「2刀流」の弱点は個々の成績の中身は濃くても、数字上の見栄えがしないところだ。

 アンドゥハーをここから逆転するには「2刀流」のインパクトがほしいのだ。見栄えのしない数字を上回る存在感を示したい。いや、「示したい」と簡単に書いたが、大谷本人がというより、メディアも含めた周囲がそれを望んでいる。そこで「投手大谷」復活にスポットが当たり続けることになる。エンゼルスは上位に離されて、他に大きな話題がない。

 幸いなことに無理やり賞レースに参加させられてるのではなく、大谷は投げたくてしかたないようだ。つまり、ドクターストップがかかるのでなければ、今季の「投手大谷」復活は時間の問題になった。ファイターズ時代、「期待は応えるものじゃなく、超えるものだと思います」の名言を残した大谷が、MLBのルーキーイヤーの佳境で何をしでかすつもりか、今は嵐の前の静けさだ。

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<えのきどいちろうプロフィール>
1959年、秋田県生まれ。コラムニスト。中央大学時代に仲間と創刊したミニコミ誌『中大パンチ』の原稿が『宝島』編集者の目に留まり、商業誌デビュー。以降、各紙誌にコラムやエッセイを執筆。網羅するジャンルは多岐に渡り、特に多くのスポーツコラムを連載。ラジオのパーソナリティーとしても文化放送、TBSラジオに出演中。

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